[アスベストユニオン]10・30東京総行動報告

2020年11月13日

 元従業員2人が提訴

日本最大のアスベスト企業ニチアスを相手に損害賠償を求める裁判を、元従業員2人(アスベストユニオン組合員)が闘っています。

羽島工場の元従業員男性Aさん(岐阜県在住70代)は、2018年11月15日に岐阜地裁に提訴。袋井工場の元従業員男性Bさん(静岡県在住80代)は、2019年2月6日に静岡地裁に提訴しました。

Aさんは、1959年3月から1970年1月までニチアスに勤務し、保温材など製品の原料となるアスベストや珪藻土などの混合作業に従事してアスベストにばく露。Bさんは、1964年8月から1972年8月まで勤務し、保温材の製造部門で圧縮プレス機による成形作業などに従事しアスベストにばく露しました。

その結果、2人ともじん肺管理区分2で続発性気管支炎を発症。Aさんは退職から48年経った2018年1月に岐阜労働基準監督署により労災認定されました。また、Bさんは退職から44年10 ヶ月経った2017年7月に磐田労働基準監督署により労災認定されました。

訴訟においてニチアスは、Aさんについて、「じん肺管理区分2の決定を受けたことをもって石綿肺ということはできない」「石綿肺特有の所見である不整形陰影の進行もなく、続発性気管支炎も発症していない」と主張。Aさんは、ニチアス退職後は兄弟が経営する喫茶店で調理師として働き、粉じんばく露の機会は羽島工場勤務時しかありません。当時、Aさんは、羽島工場内で「別荘」と呼ばれる別棟の混合場で、コンクリートの床にぶちまけたアスベストや珪藻土等の原料を、マスクもつけずスコップで混ぜ合わせる作業に従事していました。二チアスの主張には怒りが湧き、到底受け入れることができません。

ニチアスは、Bさんについても、「じん肺と診断されただけで、石綿肺と診断されたとは認められない」「不整形陰影が認められるものの粒状影がより見られることから続発性気管支炎も石綿肺でなく、珪肺に基づく可能性があり、ニチアス以外の職歴(例えば農業など)の粉じんばく露が原因でじん肺に罹患したと疑うべき」と主張。Bさんは袋井工場に8年間勤務し、安全対策が取られない中でアスベスト粉じんや他の原料の粉じんにばく露しました。全く責任がないかのようなニチアスの主張には怒りを通り越して呆れてしまいます。

2工場でアスベスト労災 100人昨年12月に厚労省が公表した「平成30年度石綿ばく露作業による労災認定等事業場」を見ると、羽島工場で80 人、袋井工場で20人がアスベスト疾患で労災認定されています。

これほどの労災認定者が出ていながら訴訟においてニチアスがその責任を認めないのは、アスベスト疾患を発症し、労災認定された元従業員の補償をできるだけ低く抑えることに腐心しているのと、責任を取らないまま被害者が高齢になりアスベスト問題が霧散していくのを期待しているからに他なりません。

不自然な石綿肺の患者数

また、ニチアス全社(工場、支社、営業所、研究所、配送センターなど)のアスベスト労災認定者数は 352人と、とんでもない数でした。内訳は、中皮腫133人、肺がん164人、石綿肺がわずか32人。同じ労働環境であれば一般的には、石綿肺よりは肺がん、肺がんよりは中皮腫の発症数が少ないのです。そう考えると、労災認定への非協力という形で、石綿肺の発症数を抑えてきたことが分かります。

つまり、まだまだ多くの被害者が埋もれているということです。

現在、コロナ禍により、2つの裁判はいずれも法廷での口頭弁論が開かれず、電話でのやりとりがずっと続いています。まどろっこしいのです。一日も早く、法廷で面と向かってやり取りできるよう願っています。

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ニチアス・関連企業退職者分会 アスベストユニオン

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[2020年10月30日]